10年目の初心

10年も経つと、

10年前のあの真新しい気持ちが、

やっぱりどこかが色あせてくるものなのだろうか。

自分ではそういうふうに決して思ってはいない。

でも、このたび取材に答えながら、

10年前のことをどんどん思い出してきた。

桐の床にしたこと、

古い家具を選んだこと、

コタツカバーをインドネシアの生地にしたこと、

食器をどんなふうにするか、

様々なものを選択したその時、

一体何を思い浮かべていたのだろう。

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記者さんからはこう感想をいただく。

‘こだわりがあちこちに感じられますね’と。

とてもとてもありがたい感想です。

でも、実際は全く違う。

こだわった?いや、そこまでこだわってはいない、たぶん。

こだわっていたら、一から十まですべて本物にしなくてはならない。

でも、ジャンクなものも大好きで、

館内のあちこちにある。

そうだ、

思い出した。

決めていたのは、

テーブルをちゃぶ台にすることだけだった。

それは、あるじと私が生まれた昭和30年代の情景だ。

それだけが決まっていて、

あとのものは、

子供のころの思い出や景色を

少しずつ手繰り寄せた。

そうしたら、今のような設えになった。

今、けっこういい感じのな空間だな、と

我ながらふと見まわすこともある。

でも、当時も現在もこんな’素敵’に暮らしてはいない。

たぶん、できなかった憧れを

今ここに表現しているのかな。

宿屋は自分を表現するのには

きっと最適な職場。

私もあるじもスタッフもみんな、

それぞれの持ち場で、自分を表現できる。

丁寧な仕事、明るい笑顔、細かい作業、地道な取り組み。

それが一つにまとまって

宝巌堂の空間ができている。

さて、このたび取材してくださったのは、

12月27日発売の2月号です。

特集内容は

‘冬も温泉でほっこり ひとり泊温泉宿’

のんびり気ままな一人旅を楽しめるえりすぐりの温泉宿を

ご紹介します、とのこと。

記者さんもカメラマンさんも女性でした。

記者さんと1時間以上もしゃべってしまった。

聞き上手で質問も的を得ている若い方。

だから、

たくさん喋って、たくさん思い出した。

ありがたい取材でした。

お客さんは思うように増えるわけじゃないし、

‘予約の取れない宿’になるには程遠いけど、

初心を忘れずにまたがんばろう、

そう思った夜でした。

2回目の雪が

突如としていきなりたくさん降った栃尾又。

いつもの景色になりました。

スタッフみんなで年賀状書きが始まりました!

来年の宝巌堂版のお年玉番号くじは

例年の2倍を予定していますよ。

当たる確率も増える!

待っててくださいねー!

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